2相撮影心臓CTによる左心耳血栓の検出
心房細動の患者さんにとって、左心耳内血栓の有無を確認することは、
脳血栓塞栓症の予防や、心房細動の治療前評価として重要です。
経胸壁心エコーでは、左心耳の描出は明確でないことが多く、
より正確に左心耳内血栓を評価するためには経食道エコーでが必要と
なりますが、患者さんにとっては負担の大きい検査です。
経食道エコーよりも患者さんの負担が少ない方法で
左心耳血栓を見つける診断法として、CTがあります。
造影剤を使用する撮影により、血栓が明確に描出されることがあります。
しかし、通常の冠動脈CTによる左心耳血栓の診断では偽陽性が多くなります。
2相撮影心臓CT (dual phase CT scan) とは、
造影剤注射後心臓が最初に描出される早期相に加えて、
60秒〜90秒後の遅延相の撮影をする方法で、
これにより単なる1相撮影の冠動脈CTよりも
左心耳内血栓の検出精度を上げることを
目的としています。
↓下の画像では、左側の早期相の画像では左心耳内にlow densityの部位を認め、
左心耳内血栓か偽陽性所見か判断しにくいですが、遅延臓ではlow densityは消失し、
血栓がないことがわかります。
心房細動時や、その除細動の直後では、左心耳の動き
は低下しており、造影CT撮影においては、左心耳内の
造影剤の充填が遅延する現象が起きるため、特に
早期相では造影剤が充填されずに左心耳内に
low densityとなって描出される偽陽性所見の原因に
なります。
この様な状態においても、遅延相では左心耳内に造影剤が
充填されるため、遅延相をみることによって左心耳内
血栓の診断が可能となります。
参考文献:
Int J Cardiovasc Imaging (2016) 32: 347-354
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